佐賀県知事選は、自民党・公明党が前佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏を推薦する一方、農業関係者を中心とした地元勢力が元総務官僚の山口祥義氏を擁立するという保守分裂の構図となった。 この保守分裂が起こった背景にあるのは、20世紀後半の主流だった「従来の自民党政治」と、21世紀に入ってから目立ってきた「新しい自民党政治」の対立である。「従来の自民党政治」では、自民党は農業などの部門から支持を受ける一方で、見返りに保護や利益分配を行っていた。政策の形成も、族議員や各省官僚などが中心的な役割を担うボトムアップ的なものであった。このような政治のあり方は、1955年以降の自民党長期政権の下で定着していった。 しかしこうした政治は、1990年代の選挙制度改革や橋本行革を経て変わってきた。すなわち、小泉政権や現在の安倍政権に代表されるように、首相官邸主導のトップダウンで、市場原理を重視する新自由主義的政策が進めら