(英エコノミスト誌 2011年2月5日号) 西側諸国はエジプトでの激変を恐れるのではなく、祝福すべきだ。 独裁政治への恐怖から、幸福なひと時を経て、無秩序への恐怖へ――。過去10日間でエジプトは弧を描くような心情の変化を経験してきた。1月25日に数千人規模で始まった抗議行動は、2月1日に劇的な最高潮に達した。 この日、数十万人がカイロのタハリール広場に結集してホスニ・ムバラク大統領の退陣を要求。その後、大統領支持派がデモ参加者を攻撃したことで、事態は暴動へと悪化した。 だが、週半ばのひどい光景にもかかわらず、エジプトにおける事態の展開は歓迎されるべきである。弾圧されてきた地域が自由の味を覚えつつあるのだ。中東では、奇跡のようなこの数週間の間に、独裁者が1人失墜し、そしてもう1人、アラブ最強の国家を30年間支配してきた人物が倒れかけている。 3億5000万人を擁するアラブ世界は期待に活気づき