本誌編集長・宇野常寛による連載『汎イメージ論 中間のものたちと秩序なきピースのゆくえ』。「他人の物語」から、「自分の物語」へと文化の中心が変容する中、虚構であるがゆえにウサギのジュディの演説は「境界を再生産」することを運命付けられていた。話題はいよいよ、本連載のテーマである「中間のもの」へと移っていきます。 (初出:『小説トリッパー』2017夏号) 6 中間のものについて 情報技術の発展は、劇映画を終着点とする「他人の物語」から、自分自身の体験そのものを提供する「自分の物語」に文化の中心を移動させている。その結果、レコード産業は衰退する一方でフェスの動員は伸びる。「他人の物語」を代表する二〇世紀的な劇映画は、現役世代の共通体験の記憶をリブートする産業として最適化しながら徐々にその批判力を失っていく段階に入っている。その一方でイベント参加、観光、ライフスタイル、スポーツといった「自分の物語」