ビート&アンビエント・プロデューサー/プレイリスターのTOMCさんが音楽家ならではの観点から、アーティストの知られざる魅力を読み解き、名作を深堀りしていく本連載〈ALT View〉。今回は、デビュー50周年を過ぎた大御所中の大御所であり、ここ最近は吉田拓郎の“引退”宣言によってその動向が改めて注目される井上陽水を取り上げます。80年代を中心に陽水が見せた音楽的冒険とは? 井上陽水『ハンサムボーイ』(‘90) 「井上陽水正史」から漏れがちなサウンド面の魅力 井上陽水と「アンビエント・ミュージック(以下、アンビエント)」は一見、縁遠いものに思えるかもしれない。だが実際には、アンビエントを思わせる井上陽水作品は少なからず存在する。例えば、この「海へ来なさい」を聴いてみてほしい。 オリジナル版は『スニーカーダンサー』(‘79) に収録。この音源は『ガイドのいない夜』(‘92)に収録された再録版 ボ
