被爆70年の昨年8月、米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)のコラムが大きな議論を呼んだ。「原爆投下を神に感謝」。2013年にはピュリツァー賞も受賞したコラムニストは昨夏、広島を訪れ、「原爆が大日本帝国を平和主義者の国に変えた」と主張した。 今でも「原爆正当論」が根強いという米国。世界的に影響力がある言論機関の中心的なコラムニストが発した「原爆に感謝」という言葉に強い衝撃を受けた。しかも、それは実際に広島を訪れた後の主張だった。日本人が発信する核への思いは届かなかったのか。疑問や焦燥感の中でその背景や経緯を知りたいと思い、筆者に取材した。 コラムを書いたのは、WSJ論説委員室のブレット・スティーブンス副委員長(42)。国際問題のコラムを担当している。コラムは昨年8月3日にウェブ上で配信され、7日に日本語版も掲載された。スティーブンス氏はこの中で、「広島や長崎への原爆投下は単に戦争を終