「水漏れして水がたまらない」「水はあっても利用者がいない」――。 全体の4分の1に何らかの問題があることが判明した農林水産省所管の農業用ダム。農水省は今後、国営事業として新規建造は行わない方針を明らかにしたが、巨額の公費を無駄に投じた責任は誰がとるのか。怒りとあきらめが交錯する現場を歩いた。 ◆一滴もない◆ 北海道富良野市中心街から車で約1時間。林道を登ると、高さ48メートルの壮観な堤が姿を現す。本来430万トンの貯水量があるはずの東郷ダム。だが、ダム底には冬も夏も水は一滴もたまらない。 1977年着工。国と道が379億円を投じて93年に本体工事を終えたものの、間もなく水漏れが判明。ダム底の地質が火山灰性のため水を通しやすいとの説もあるが、漏水の根本的な原因はいまだ不明という。 「一体、どんな事前調査をしたんだ。ずさんすぎる」。地元でタマネギやジャガイモを生産する中村行男さん(56)は憤る