高校時代は、ひどく退屈だった。 その頃の私は、自分で自分の事をサイダーの泡のようなものだと思っていた。 浮かんでは消えて、また小さく現れて浮かび、消える。 クラスの中で、いるのかいないのか解らないような、透明な存在。 それでよかった。 私は本当に、透明でいたかったから。 進路を決める時期に、私は絵本作家になるための専門学校に行こうとしていた。 当然周りは「そんなところに行っても、絵本作家になれるわけがない」と言って反対したが、聞かなかった。 その学校は1名だけ授業料免除の奨学生制度があり、それに申し込んだ。 一番好きな絵本の感想文を出すのが条件だった。 その自信はいったいどこから来るのか解らないが、私は落ちる気がしなくて意気揚々と感想文を書き上げた。 ところがその感想文に同封する願書に、私はコーヒーカップを倒して汚してしまった。 慌てて拭いたけれど、願書にはうっすらと染みが残った。 高校で