「アレクサンドリア」 ローマ帝国末期のエジプト・アレクサンドリア。最先端の学術文化都市として繁栄していたこの街に、ヒュパティアという女性科学者がいた。彼女は、巨大な図書館を拠点に天文学や哲学を研究していた。ところが、晩年、キリスト教徒の迫害を受け、415年に虐殺されてしまう。 この史実から、虚構を交えた壮大な歴史絵巻を紡ぎ上げたのがスペインのアレハンドロ・アメナーバル監督だ。前作「海を飛ぶ夢」で尊厳死を扱い、現代人の死生観に揺さぶりをかけた。今回彼が試みたのは古代アレクサンドリアの街を細密に復元すること。そして宗教と科学の関係に一石を投じることだった。 当時のエジプト人は、古代から続く多神教を信仰しており、その緩やかな支配の下で天文学や数学、哲学などの諸学問が発展していた。ところが、貧しい民の救済を訴えるキリスト教が下層階級を中心に急速に勢力を広げ、古代宗教に拠(よ)って立つインテリ