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■ - 戦場のガールズ・ライフ
打ち合わせに指定された店に行くのに、 百貨店の中を通った。 品良く冷房の効いた店内をまっすぐ歩いて... 打ち合わせに指定された店に行くのに、 百貨店の中を通った。 品良く冷房の効いた店内をまっすぐ歩いていると、 視界の隅に、なにか見覚えのある色が見えた。 昔、好きだった男のひとが、一度だけプレゼントをくれたときの、 その箱の色だった。 足は止めず、まっすぐ前を向きなおし、 つま先に神経を集中して、歩く。 その店の方向は決して見ない。 帰りに別のフロアに入ると、 昔、自分が使っていた香水の香りがした。 あまりどこにでもは売っていない、 男でも女でも使える香りの。 その品物がどこにあるかは見ない。 探さない。 確かめない。 足は止めず、振り向かない。 わたしはけっして振り向かない。 いつどんなときでも、絶対に。 外に出ると、すべてを真っ白にするような、 強い夏の陽射しが待っていた。