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文化人類学者のノート(「絵描きさん」の村に関して) - 焚書官の日常
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文化人類学者のノート(「絵描きさん」の村に関して) - 焚書官の日常
…この「絵描きさん」の村には、村人同士で絵を贈り合うという風習があり、さいしょそれを私は、奇妙なも... …この「絵描きさん」の村には、村人同士で絵を贈り合うという風習があり、さいしょそれを私は、奇妙なものだと思っていた。複製が可能なデジタルデータを「贈る」ということの意味が理解できなかったのだ。 それで私は、彼らが絵を贈った後の行動をすこし観察した。 絵を書いた側の者は、贈ったあとも、オリジナルのデータを自分が持っているわけだが、その絵を自分の管理するスペースに飾ることはしない。贈った側は、自分のスペースに飾るかわりに、贈った相手のページ(トップページ)へのリンクのみを、自分のスペースに書くのが、通例であるようだった。 一方で、絵を貰った側は、その絵を自分のページに飾り、贈ってくれた人のページ(トップページ)へのリンクを併記していた。 どうやらかれらは、デジタルデータである絵を複製することを、擬似的に贈り物とみなし、制作者でない者が絵を「所有」しているかのように、見立てているようなのだった。