9月5日に発生した京急事故から1カ月以上が経った。事故の詳細な状況はまだ明らかにされていないが、中でも運転士のブレーキについて、「どの位置で非常ブレーキをかけたのか?」が争点となった。 私も運転中に、初めて直前横断の通行人を見て非常ブレーキを投入したことは長い月日が経った今でも忘れられない。それは、早めにブレーキをかけたことで事故に至らず、正しい判断ができたという思い出というよりも、私個人の裁量で時速120Kmの速度で走る電車を駅ではない場所に停止させることに、とてつもない緊張感を覚えたという記憶のほうが強い。 急ブレーキを投入した後の減速感と、数秒後に訪れる停車時の衝撃は独特の感覚がある。そんな事故に至る前の段階での「生」の体験をもって運転士としての責務を実感すると同時に、もし衝突していたらどうなっていたかを想像して、停止することの重大さを知るのだ。 非常ブレーキは気軽に使えるものではな