日本を代表する企業であるトヨタ自動車が、従来にない種類株式「AA型種類株式」(以下「本件種類株式」という)を発行する計画については、前コラムで紹介した。その後、6月16日に開かれた同社の定時株主総会において、本件種類株式を発行するための定款変更案が可決され、それを受けた発行決議が行われた。そこで、以下では、本件種類株式の発行計画公表後に提起された様々な疑問や批判を踏まえながら、改めてその意義について私見を述べたい。 本件種類株式の発行計画に対しては、その意義を高く評価する見解が示される一方で、疑問や批判も投げかけられた。とりわけ、目についたのは、本件種類株式が、トヨタ自動車のコーポレートガバナンスに否定的な影響を及ぼすのではないかとの懸念である。 そうした懸念の根拠の一つは、本件種類株式が、実質的な社債権者に議決権を与えるものではないかというものである。これは、本件種類株式が概ね5年経過後