毎月、各論壇誌が届くと、まず表紙と目次をざっと眺める。その編集の質の判断基準はいろいろあるが、筆者名とタイトルの2つだけで読む前からおおよその内容の察しがつく記事ばかりの雑誌は、やはりあまり高く評価できない。毎月の定点観測でスレてしまった論壇ウオッチャーがすぐ思い浮かべるような予想を、うまく飛び越えてくる雑誌こそが面白いのである。 Voiceの巻頭特集「沈む国・浮かぶ国」は、そうした予想をいい意味で裏切った内容だった。平素の同誌の保守的な誌面作りからすると、このタイトルならまた近隣諸国への批判特集だな、と多くの人が予測するだろう。しかし、論客のセレクトにはひねりが加わっている。 たとえばロシアを論じる軍事アナリストの小泉悠「対露積極外交の裏をかくプーチン」は、対露接近を進める日本側に根強く存在する楽観論にくぎを刺す。台頭する中国への牽制(けんせい)カードとして対露関係改善を必要とする日本側