日韓請求権協定による「経済協力」は実質的な補償・賠償であった、日本軍「慰安婦」の請求権は韓国政府により放棄されたため、元「慰安婦」女性たちに日本政府に損害賠償を求める請求権はない。本書『帝国の慰安婦』において、朴がこう主張することはこれまで見たとおりである。 ここで一つの疑問が生じる。朴の理解に従えば、「慰安婦問題」はとうに「解決」したことになりはしないか、という疑問である。だが、これに対する本書の答えは否である。朴は繰返し「慰安婦問題」を「解決」しなければいけない、と主張する。そして日本政府に何らかの行動を「期待」している。それは一体何か。「第五章 ふたたび、日本政府に期待する」の「一九六五年の日韓協定の限界」について、朝鮮語版の記述も参照しつつ引き続き読み進めてみよう。 その前に、本書を「読む」上で、筆者の主張の再構成や矛盾の指摘、そして日本語版と朝鮮語版を比較対照することがいかに重要
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