ミニマル・ミュージックの作曲家スティーヴ・ライヒ(1936–)は、《ドラミング》や《18人の音楽家のための音楽》《ディファレント・トレインズ》といった作品でよくしられている。その経歴はきわめて多岐にわたる手法や作風におよんでいるが、かれの初期作品のほとんどで耳にすることができる特徴は、さまざまなタイプの位相のずれだ(コープ 2011)。 1965年に完成した《イッツ・ゴナ・レイン》は、位相のずれをもちいたライヒの代表作だ。サンフランシスコの街頭で説教する黒人牧師の声、テープに録音されたこの声が素材となる。第一部分は、牧師がノアの洪水のくだりを説教する「It’s gonna rain」、第二部分は「Knocking upon the door, let’s showing up, Alleluia, God, I didn’t see you」が反復パターンとしてもちいられ、そこに「漸次的位
