甲南大学法学部教授:笹倉香奈さん(38) 冤罪(えんざい)かもしれない事件を弁護士や学者らが無償で調べ直し、無実の罪を晴らす民間の活動が1990年代から米国で広まった。イノセンス・プロジェクト(IP)という。その日本版「えん罪救済センター」が4月に始動した。かねて「IP実現が私のライフワーク」と宣言し、奔走した成果だ。 幼いころ、いとこの家で読んだ漫画「はだしのゲン」が強く胸に残った。力のない人が国家に虐げられる怖さを想像した。小学5年のときにリンカーンの伝記に触れて、弱い立場の人を守る弁護士という職業を知る。弁護士を目指して東京大学法学部へ進むが、より広い視野で人権について考えられる刑事訴訟法の学者の道を選んだ。 2011年、米国の刑事法を学ぼうとワシントン大学に留学し、出会ったのがIPだ。学内で本物の証拠の山と格闘する中で、IPで何人もの死刑囚が救われたと知った。死刑や拘禁刑が確定した