将棋界の枠を超えて社会的にも大きな影響を及ぼした不世出の棋士・米長邦雄永世棋聖。没後10年を目前にしてその知られざる素顔を明らかにする、弟弟子による初めての本格的評伝『名人を獲る』(国書刊行会/著・田丸昇)が発売されている。師匠・佐瀬勇次名誉九段との人間臭いやり取りや数々の“米長伝説”を転載し、ご紹介する(全2回/師匠との“衝突”編に続く) 近年のタイトル戦や人気棋士の対局では、昼食の「勝負めし」と「おやつ」が注目されている。テレビやネットですぐに報じられると、食事を出前した店に客が殺到したり、菓子店の商品が売り切れになることもある。 米長は、対局中の食事やおやつにこだわった走りの棋士だった。新聞の観戦記や雑誌の記事から、いくつか紹介する。 《「ベリーレアのビフテキを二百五十グラム。それに茹でたジャガイモとニンジン。ベリーレアという点を間違わないように」と米長》 《米長は、ご当地のうまいも