図録7852には江戸の人口分布・商業分布を掲げたが、ここでは、商業分布をさらに業種別に分けて示した。資料は、同じく、山室恭子「大江戸商い白書――数量分析が解き明かす商人の真実」講談社メチエ(2015年)である。 業種は同業組合の地域割り組織(番組)の特徴などから全域型、都心型、特化型に分けられる。 全域型12業種(米穀問屋から銭屋まで)のうち店舗数が多いのは舂米屋(つきごめや)と薪炭仲買(すみたきぎなかがい)である。これらはまさに全域展開であり、武家地の番町と農地の向島という例外的地区を除いてすべての地区にまんべんなく店舗を展開している。米穀問屋や両替屋もほぼこれに準じている。 舂米屋は米穀問屋からコメを仕入れて精米して小売する現代の米屋のことであり、薪炭仲買は燃料屋であり、現代のLPガス屋やガソリンスタンドのような業態である。毎日消費する食品やエネルギーであり、重量物でもあるので現代と同