「どの本も全て手に取って読むことができます」。書庫を案内してくれた司書の新屋朝貴さん(35)はそう教えてくれた。三康図書館は明治期に出版社が設立した旧大橋図書館(1953年閉館)の蔵書約18万冊を引き継ぎ、64年に開館。仏教研究をする三康図書館の付属図書館でもある。現在は一般に開放された図書館として運営されている。 戦前に国が検閲 検閲の歴史に詳しい元中京大教授の浅岡邦雄さん(近代出版史)によると、戦前の日本では1893(明治26)年制定の出版法などに基づき、国が検閲を行った。内容が不適切と判断された書籍は発売や頒布が禁じられた。特に明治天皇暗殺を企てたとして、社会主義者の幸徳秋水らが逮捕された「大逆事件」(1910年)を契機に取り締まりが強化された。浅岡さんは三康図書館に残された本について「戦争中に焼けてもおかしくなかった。これだけの本が残されているのは貴重だ」と話す。
