父の地方勤務に伴い、思春期を草深い東国で過ごす少女。彼女は姉や継母から、光源氏のことなど様々な物語について教えられます。すぐにも読みたいのですが、何しろ田舎のこと。本屋さんなんて、どこにもない時代です。 「更級日記」=菅原孝標の女(すがわらたかすえ の むすめ)=は、そんな熱烈な文学「推し」だった少女が、やがて晩年に至り、苦い思いと共に一生を振り返った回想録です。 彼女が生まれたのは西暦1008年(寛弘5年)、今から千年以上昔の平安時代。同じ年、政界のトップである藤原家に何が起きたかは、源氏物語で知られるあの人が「紫式部日記」に詳細に記録しています。もちろんそこに、半端な役人に過ぎない菅原孝標に女児が誕生したなんて、かけらも出てきませんが。 やがて父の地方勤務が終わり、京の都に帰った彼女は「源氏物語」50余帖をはじめ、「在中将」「とほぎみ」「せりかは」などなど、手を尽くして物語を集め、寝る