古くからのファンなら、冒頭の和音とドラムを耳にしただけで涙がこぼれてくることだろう。スクエアプッシャー通算15枚目、5年ぶりとなるニュー・アルバム──といってもそのあいだにプレイヤーとしての側面を強く打ち出したショバリーダー・ワンのアルバム(2017)や、逆にコンポーザーとしての側面に重きを置いた、BBCの子ども向けチャンネル CBeebies による睡眠導入ヴィデオのサウンドトラック(2018)に、オルガン奏者ジェイムズ・マクヴィニーへの楽曲提供(2019)という、対照的な性格の1+2作品があったわけだけれど──『Be Up A Hello』は、ぶりぶりとうなるアシッド、切り刻まれたドラム、ジャングル由来のリズムなど、往年のスクエアプッシャーを彷彿させる諸要素に覆いつくされている。とはいえこれをたんなる懐古趣味として片づけてしまうことはできない。アルバムは序盤こそメロディアスで昂揚的な展