映画『遠い山なみの光』の予告編で女優の吉田羊さんが窓辺に腰掛け娘に話しかけるシーンを目にして、公開されたらやっぱり観たくなるだろうな、と思った。 原作はカズオ・イシグロの同名の長編小説だ。 彼の作品ならば、やはりまず原作から読まなければならないような気がした。 カズオ・イシグロの本はこれまでに2冊しか読んだことがないから決めつけるわけにはいかないが登場人物の描写がまるで自分がその場にいるように見事に描かれていても、その心情がどのようなものだったかについては、読者の解釈にゆだねるような、そんな「間」のある描き方をする作家なのかなという印象だった。そして私にとってそのことが彼の魅力であると感じられるので、先ずは自分で原作を読み、自分なりの理解をしてから、映画を観てみたいという気持ちが強かった。 そのようなわけで、私は急ぎカズオ・イシグロの『遠い山なみの光』〔新版〕早川書房を読んでみることにした
