私はフリーランスのデザイナーで、主に本のデザインをすることを生業としている。肩書きでいうならば、装幀家、あるいは、ブックデザイナーということになる。 私がこの言葉に出合ったのは、遡ること10数年前、いまはなきアメーバブックスという出版社で働いていたときのことだった。当時20代の私は、サイバーエージェントの子会社として設立されたこの会社にウェブ・デザイナーとして在籍し、日々目まぐるしく変わっていく環境のなかで業務に勤しんでいた。(前回の記事はこちら) 出版社アメーバブックスは解散する──。 そう聞かされたのは、私が働き始めて4、5年ほどたった2007年ごろのことだった。一介のデザイナーに過ぎなかった私は、内情についてうかがい知ることはできなかったものの、ベンチャーである以上、そういったことはいつでも起こりうることだと心のどこかで覚悟はしていた。 30代で「所属先」がなくなるということ ただ実