小論は,フランスの社会学者であるP.プルデューが提唱する「社会空間」と「界」の構築という観点から,彼の経験的研究をわが置のケースに活用する可能性を模索する。この経験的研究の目指すところは,観察された可変要素の一つひとつのうちに,不変の要素,つまり「構造」を把握することである。そのために取らなければならない諸規準は,以下のように整理することができる。1.実体論的思考様式に代わって,関係的思考様式を採用すること。2.自生社会学との切断を行なった上で,対象の構成を試みること。3.個別の要素に事実を還元するのではなく,事実の体系的構成を行なうこと。4.位置空間と態度決定空間の同型性と,その相対的な自律について検討すること。5.客観化によって生じた現実との距離を,さらに客観的に把握してみること。もちろん,上記の諸規準は,実際にデータの収集・分析を行なうことを前提にしており,そのかぎりにおいて小論の議