もう10数年前のことになるが、『昭和恐慌の研究』(2004年、東洋経済新報社)の形になる共同研究を行った。この書籍は出版年度の日経・経済図書文化賞を受賞するなど一定の評価を得、今日でも増刷されて広く愛読されている。この本はいわゆるリフレ派(デフレを脱却して低インフレに移行することで経済を安定化させる政策を志向する集団)のマニフェスト的な位置にある。しばしば共同研究会の場で、エコノミストの故・岡田靖氏が、「中長期的には貨幣数量説が成立する。問題の核心は日本銀行の政策のあり方だ」という趣旨の発言をしていたことを思い出す。よくデフレ(物価の継続的下落)は貨幣的現象といわれるが、その特徴を明瞭に要約したものだといえる。『昭和恐慌の研究』はいわばその詳細な理論・歴史・実証の総括的な分析の本だった。