「アカン。この人、ハンパないわ――」 学生時代にアメリカンフットボールに打ち込んでいた頃、富士通フロンティアーズというチームの練習に参加させてもらったことがあった。フロンティアーズと言えば、日本一に何度も輝いた社会人リーグの強豪で、当時も多くのアスリートが所属していた。 「高校時代は3番手ピッチャーだったんだよ」 中でも衝撃を受けたのは、植木大輔という日本代表選手の動きだった。 身体は決して大きくはない。だが、スピードもパワーも異次元。何より驚かされたのは全身がバネの塊のような瞬発力だった。「こういう人が日の丸を背負うんだなぁ」と妙に納得した記憶がある。 だが、そんな身体能力のインパクト以上に驚いたのが、練習後の雑談で彼が漏らしたこんな一言だった。 「高校時代は野球をやっていたんだけど、3番手ピッチャーだったんだよ。甲子園までは行けたんだけど、1回もマウンドには立てなかったなぁ」 「ウソだ
