中国当局による弾圧は目を覆いたくなる。最近では東南アジアなど、国外にも張り巡らせた“密告網”により民主化を望む中国人が次々と捕らえられている。国際社会の目が届かぬ地で、中国当局は不穏の芽を摘み取っているのだ。 ノンフィクションライター・安田峰俊氏は、当局の弾圧を受けタイに逃れた民主活動家を取材。習政権に背く者に対する凄まじい拷問が明らかになった。 * * * 地理的に近い東南アジア各国に流入する中国人亡命者はいまなお多い。私が昨年2月にバンコクで出会った亡命者・顔伯鈞(イエンボォジュン)氏が経験した亡命の壮絶な経緯と、現状を紹介しておこう。 顔氏はかつて北京工商大学の副教授で、新公民運動 (※注1)に積極的に携わった人権活動家だ。 【※注1/2012年5月に許志永が正式に提唱した、穏健な民主化運動。最盛期には中国全国で10万人規模のシンパが存在したとされるが、習近平政権成立後にほぼ壊滅した