□比較文化史家 東京大学名誉教授・平川祐弘 新しい憲法について国民的な議論を高めたい。比較文化史家として私も提案させていただく。 《聖徳太子の「十七条憲法」》 「和を以って貴しとなす」。この聖徳太子の言葉を私は日本憲法の前文に掲げたい。和とは平和の和である。平和を尊ぶ日本の国家基本法の冒頭には、わが国古来の言葉で理想を謳いたい。大和の国の伝統に根ざす和を尊ぶことで国内をまとめたい。和を尊ぶべきことを広く世界に訴え、かつ私たちの行動の指針としたい。和は和諧の和であり、英語のharmonyであり、諸国民の和合である。 現在の日本にはむろん不平も不和もあるだろう。しかし東洋の他国と比べれば、和諧社会の理想にまだしも近いことは明らかだ。西洋諸国と比べても、貧富の格差が少ない平安な長寿社会といえるのではないか。大和島根に住む人々が心中で和を以って貴しとしている以上、この理想こそ日本国民が胸をはって主