本稿では、成立しなかった恋愛の困難を人々がどのように経験し、意味づけているのかということと、その際の集団的なコンテクストを考察するために、「サークルクラッシュ」という現象の経験者6名へのインタビューデータを分析する。 恋愛の社会学の分野では個別の恋愛エピソードを調査するアプローチが少ないため、個別の恋愛の際に集団がどう意味づけられているかが十分明らかになっていない。そこで、集団に着目してデータを横断的に分析し、集団との紐帯の弱さが「振られる側の男性」にとっての失恋の傷つきや「振る側の女性」に対する加害的アプローチに繋がっていることを示す。また、集団との紐帯の強さがむしろホモソーシャリティを助長することで、「排他性規範」や「性道徳」に基づいた女性への非難に繋がっていることを示す。以上の分析結果から現代の「選択的関係」における恋愛の困難についての新たな視点を提示する。