わたしはニナ・リッチが好きで、たまに買うこともあるけど、それはびしっと気合を入れた場合で、何気に試着したスカートとセーターに約五十万円というのは、何かが間違っているような気がしてならないけれど、どうなんだろう。いいものはそんな値段ばっかりだ。 「すごくいいもの」を着るとそれ以外はもう見えなくなる魔法というのがあって、これが大いに問題なのだ。 さらに剣呑なのは、悪魔の囁き「ザ・日割り計算」。 「一生着るんだから一回につきこれくらい、と思えば安いんやないの」という、恐ろしい錯覚なのだった。 こないだ、アンティーク市ですごく好みの指輪を見つけ、そのお値段にひるんで3度も試着させてもらいながら泣く泣くあきらめた帰り道、友達が言った。「まみさん、未映子さんの『おめかしの引力』読んだあとだったら、絶対さっきの指輪、買ってるよ」。そもそも読もうとは思っていたので早速手に取ると、出て来る出て来る、おしゃれ