ベルガモットのパルファム。 狭い室内に漂う。 カーテンに遮断されたままの個室。 日光で分解されちゃうから。 アップルティーの甘ったるい匂いと、混じり合って、溶ける。 深く、深く。 流転する臭気。 鼻腔に届けば、中枢神経を刺激する。 既知の香り。帰れる刺激。 逃げ出したくなるくらい、よく知ってる。 フレちゃんは私に問う。 「志希にゃんってさー。あっちの大学途中でやめちゃったんだよね~」 「そうだよ~」 正常な心音で答える。 「どうして?どうして?」 「なんでだろう?飽きたからかな~♪んふふ~、エクスタシー!が、足りないとね。ねむーくなっちゃうんだなぁ」 不感症。 怖いものってある?私はあるよ。 慣れれば刺激は鈍くなる。 鈍くなって薄くなって何も感じなくなれば、私は貌を失う。 逃げなければ。 空白地点から眺めれば、単調な刺激でまた信号が通る。 そんな気がするから。 「それじゃあさ、もしも……」
