中国人住民と平穏に暮らしながらも、時折顔をのぞかせる、日本人住民の割り切れない思い。住民の半数が外国人という芝園団地(埼玉県川口市)に漂う「もやもや感」は、何か手を打たなければ、どんどん膨らむのではないか。こんな思いを募らせていた私は、カナダ・ケベックで住民と対話を重ねてきた、一人の学者に疑問をぶつけた。彼から返ってきたのは、重い問いかけだった。(大島隆、写真も) 「言っちゃいけないけど、思っちゃう」 昨年のある日、芝園団地の中を、昔から住む日本人住民2人と歩いていたときのことだ。近所にある新しいマンションの建物を指さしながら、二人がこんなやりとりを交わした。 「あそこも中国の人がたくさん住んでいるだって」 「どうして中国の人がこんなに集まってくるんだろうね。あ、でもこういうことは言っちゃいけないんだよね」 「でも、思っちゃうよね」 後ろを歩いていた私は、2人にかける言葉を見つけられなかっ
