吾妻さんの作品を担当した早川書房編集者の阿部毅さんはこう語る。 「吾妻さんの作品はいつも、『こういうものが読みたかった』というもので、SF、エロチックも含めて、毎回、新しいものを提供してくれる作家さんでした」 アルコール依存症に苦しみ、2度失踪し、路上生活を送った実体験を描いた『失踪日記』(2005年出版)は、文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞に選ばれた。この作品を担当したイースト・プレス編集者の堅田浩二さんは、吾妻さんの人間性についてこう語る。 「失踪したり、依存症になったりと破滅的な印象を持たれている方もおられるかと思うのですが、実際は物静かで、ストイックな方でした。断酒後は一滴もお酒を口にされませんでした。『失踪日記』の続編の『アル中病棟』は300ページを超える長編ですが、8年間かけてコツコツと描き下ろされました。その間、吾妻さんはデッサン教室に通い、改めて絵画技法を学ぶなどマンガ