「だるまちゃんとてんぐちゃん」「からすのパンやさん」など、幼いころ擦り切れるほど読んだ絵本の作り手は、化学メーカーの研究者だった。絵本作家と二足のわらじを履きこなし、退社後も含め半世紀に及ぶ著作生活の作品は、500冊を超える。 研究の合間に、地域の子どもと直接ふれあい、構想を練った。「ザリガニやトンボより生き生きした内容でなければ、見向きもされない」。子どもを「小さなアインシュタイン」と呼ぶ。「子どもはカネも名誉も関係なく、純粋に好きなことに夢中になれる。入試に役立たなくても、その芽を育てれば、分析力と判断力を持つ大人に育つ。その手伝いをしようと思った」 実は、著書のうち約150冊が研究者の視点を生かした「かがく絵本」だ。1冊かき上げるのに、約200本の文献を読み、調査に10年以上かかることもある。「まぼろしではなく当然来るべき夢を描き伝えるため」、今も日本化学会会員として最先端の研究にア