疑惑に満ちたペテン師の真実が明かされる――そんな期待を抱くなら、扇情的な週刊誌の見出しで社会を捉えている証左。これは、マスメディアが作り上げ思考停止をもたらす、“わかりやすさ”という病へのショック療法のようなドキュメンタリーだ。レッテルを貼られた男の人間味に触れ、妻との関係を通して愛おしささえ覚えたかと思えば、虚実の見分けがつかない事態に放置され、混沌の渦に包まれる。メディアリテラシーに応じて多様な解釈を呼び起こすだろう。善悪や真偽に単純化せず物事を見つめれば、確かなことなど何もない。一面的な見方にすぎない報道を疑ってかかり、自分の目を見開き耳を澄まして思考せよ、と映像は語りかけてくる。