4月上旬の週末、難攻不落で知られた小田原城は桜の時期を迎えた。「ここに住んで本当によかったね」。お堀沿いの桜並木をゆっくりと散策しながら、小木曽一馬さん(33歳)は1歳半の愛娘を抱く妻なつめさん(35歳)に語りかけた。 都内の企業に勤める共働きの小木曽夫妻が神奈川県小田原市にやってきたのは2021年秋。当初は都内のマンションを物色していたが、それぞれの職場で在宅勤務が増えたのを機に移住を決断した。 「自然が豊かな場所で、伸び伸びと子供を育てたい」。小田原はそんな夫婦の願いを実現する格好の街だった。山と海に囲まれ気候は温暖。街にはゆったりとした雰囲気が漂うが、東海道新幹線の停車駅で都心へのアクセスはいい。 夫妻が下見に不動産業者を訪れると、担当者は手慣れた様子で市内を案内してくれた。聞けば移住を検討する家族が引きも切らないのだという。実際に住んでみると、同じような境遇にある移住家族のコミュニ