2月23 菊池秀明『太平天国』(岩波新書) 8点 カテゴリ:歴史・宗教8点 帯には「人類史上最悪の内戦」との言葉が載っていますが、太平天国の乱による死者は江蘇省だけで2000万人を超えるとも言われ、まさに世界大戦に匹敵するような犠牲者が出ています。また、乱が14年近く続いたのも1つの特徴で、同じく清末の反乱として知られている義和団の乱に比べると、その持続性は段違いです(義和団の乱は1年ちょっと)。 本書はそんな太平天国の乱の始まりから終わりまでをたどるとともに、そこに中国の歴史に繰り返し現れ、現代にも通じている1つのパターンを見出そうとしています。副題は「皇帝なき中国の挫折」となっていますが、単純に太平天国の興亡のドラマを見せるだけではなく、中国の近代や、中国の政治や社会そのものを考えさせるような内容です。 目次は以下の通り。一 神は上帝ただ一つ二 約束の地に向かって三 「地上の天国」の実