副題は「徳川期日本の政治空間と「公然の秘密」」。 何とも面白そうなタイトルと副題ですが、翻訳に関しても監訳を務める三谷博が本書の面白さに注目してネット上で訳者を募り、それに応じた友田健太郎が訳したというもので、今までにはない切り口で江戸時代の政治空間を分析しています。 「ホンネとタテマエ」というのは日本社会の特徴というもので、江戸時代の政治に「ホンネとタテマエ」の乖離があったと言っても、「そんなものだろ」と思ってしまうでしょう。 しかし、本書で紹介されている「ホンネとタテマエ」の乖離は異常なもので、例えば、死んだはずの大名が生きていることにされたりしています(「ゾンビ大名」)。 本書はこのような徳川期の政治空間を「表」と「内」または「内証」という概念を使って描き出します。表向きは徳川の厳し掟に従っていても、内側では従ってない。しかも、徳川も表の秩序が維持されるならそれを認めるというロジック