とある漫画作品で描かれた癌をめぐる偽医学と病理医との対峙。この構図は、農薬忌避や無農薬信仰と、農と食の事実と似た様相を見せる。漫画作品を通しながら、誤った情報を信じてしまう心境や原因、大事にすべきこと(原理原則)は何かを考えてみた。 『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』という漫画が好きだ。 主人公の岸京一郎は誰もが認める凄腕の病理医だが、性格と目つきが悪く、人を見下す時以外はほぼ笑うことすらない。 冷たく傲慢で身勝手な印象を振りまきつつ、その実、病理診断と患者に対してはどこまでも真摯に向き合う姿が描かれる。 AGRI FACTの記事でわざわざ取り上げるからには、いわゆる疑似科学やデマへの厳しい追及が盛り込まれている作品なのかと期待させてしまうかもしれない。 残念ながら『フラジャイル』は、それらの主題を表立っては取り扱っていない。 だが、ときに静かな怒りを感じさせる描写がある。 とりわけ印