2018年に言葉と食をめぐる記録『わたしを空腹にしないほうがいい』を刊行し、エッセイ集『うたうおばけ』歌集『水中で口笛』など、日々の生活の機微をみずみずしい筆致でつづる、作家のくどうれいんさん。2021年に発表した小説『氷柱の声』が第165回芥川龍之介賞の候補作に選ばれ、注目を集めています。 そんなくどうさんの本棚にずっとあるヴィンテージ・ブックは、江國香織さん初の詩集『すみれの花の砂糖づけ』。誰かを惹きつける力を貸してくれて、今もくどうさんに「憧れ」というきもちをくれる本になっているといいます。 (文/くどうれいん、イラスト/久保田寛子、編集/メルカリマガジン編集部、ノオト) わたしはその本を二冊、ふたりの女に渡してしまっているから、つまりは三度買ったことになる。買ったうちの二度は、駅の小さな本屋で購入した。だれかと会うとき、かならずやその人をめろめろにしたいと思うとき、とっておきな雰囲