「選挙では必ず投票に行きましょう」とか、「自分の意見を持ちましょう」とか、「身近な問題に関心を持ちましょう」とか、「皆で世の中を少しでも良い方に変えましょう」とか、白々しいにもほどがあるご忠告をとかく口にしたがる御人が後を絶たない。しかも、そういう御人は大概、社会で一定のステータスを確保している幸せな方々ばかりである。 すでに中年になっても何の権限もなく、めぼしい資産もなく、ささやかな自由もない筆者は、「社会的影響力ゼロ状態」の自分をあるがままに受入れる境地に達しており、そうした白々しいセリフは、恰も流れゆく風景の如く、筆者の意識に上ることさえないまま、空気の振動という物理的現象としてやがて静寂へと収束していく。筆者のような下々の人間は、遅かれ早かれこんな境地に達し、意識しようとしまいと皆同様に、日々をあきらめつつ、いい加減適当に、恙無くやり過ごしているものだ。 だが不思議なことに、上々(