2015年の4月,M7.8の地震がネパールを襲った。首都カトマンズから80km近く離れた震源地で発生した地震波はすぐさま,堆積物でできた柔らかな地層を走り抜け,地表の首都に立ち並ぶレンガ積みの脆弱(ぜいじゃく)な建物を打ち倒し,そこに住む人々の生命と生活に甚大な被害をもたらした。 国際赤十字や国境なき医師団などによる救援隊が迅速に組織され,現地に派遣されたが,救援活動にあたって問題となったのは,現地の地図が十分に整備されていないことであった。このとき,自らを「マッパー(mapper)」と呼ぶ人々が参加する,あるボランティア団体の活動と,その成果物である「OpenStreetMap(OSM)」注1)にスポットが当たった。 OpenStreetMapは,オープンデータ地図の作製を目的とした世界的な活動である。作製された地図データは誰もが無償で自由に利用できるだけでなく,利用者自身もまた地図の作