『兼好法師 徒然草に記されなかった真実』(小川剛生 著) 「つれづれなるままに、日ぐらし、硯にむかひて」と書きおこされる『徒然草』を、国語の授業などで読んだことがある人は多いだろう。試験に備えて、「『枕草子』は清少納言、『徒然草』は吉田兼好」と作品と作者の組み合わせを暗記したこともあるかもしれない。だが本書の帯には「『吉田兼好』は捏造された」と、かなり刺激的な惹句が記されている。 人物研究において、まず依拠すべきは系図である。兼好の名は、神祇官に仕えた卜部(うらべ)氏の系図のなかで、吉田神社の神主を兼ねる吉田流の一員として見えており、「蔵人・左兵衛佐」という官歴も記されている。この情報にもとづいて「吉田兼好」と呼びならわされ、官歴と作品の内容から、彼の生活圏や人物像が推測されてきた。 だが本書はその系図が吉田兼倶(かねとも/一四三五~一五一一)による偽作であることを示す。兼倶は自身が構築し
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