将来コロナ禍を振り返る時、渦中で最も大きな影響を与えた本として名前が挙がるのは、「人新世の『資本論』」(集英社新書)だろう。その著者で哲学者の斎藤幸平さん(34)に、コロナと気候変動、資本主義についてうかがった。 ■中軸に据えた「気候変動」 「人新世」は「ひと・しんせい」と読む。 まだお読みでない方のために、ごく簡単なあらましをご紹介したい。 「人新世」は、オゾンホールの研究などでノーベル化学賞を受けたオランダの科学者パウル・クルッツェンが提唱して世に広まった言葉だ。彼は、人類の活動の痕跡が地球を覆いつくし、環境や生態に大きな影響を与えるようになった現代は、地質学的に見て新たな年代に突入したと考え、それを「人新世」と名付けた。 学校で習ったように、地質時代は大きく分けて、動物が出現して以降の「古生代」、恐竜などが栄えた「中生代」、動植物がほぼ今の状態に近くなった「新生代」と続き、それぞれが