「何を言えばいいのか……」というのが、彼の最初の言葉だった。 日本対ベルギー戦を終えて、ロストフ・アレーナからパリのフィリップ・トルシエに電話したときのことである。 会見ルームの外に据えられたモニターでは、記者たちの質問を受けた西野朗監督が淡々と試合をふり返っている。その映像を見るともなしに眺めながら、私もトルシエにこう切り返した。 「そうですね。あなたは何が言えますか?」 多少の沈黙の後に、トルシエが話し始めた。内容が良かったがゆえに後悔に満ち溢れたベルギー戦のこと、日本の敗北の理由、そしてロシアワールドカップを通じて、日本が世界に与えたインパクトについて……。 心に差し込んだ痛みの念とともに、トルシエが日本のロシアワールドカップを総括する。 「ベルギーが勝ったのではなく、日本が負けたのだ」 「まず言えるのは、準々決勝進出という大きな目標を前に、日本は経験不足と未熟さを暴露したことだ」