犬をこよなく愛する国民、揺れる動物愛護の国・イギリス。イギリス人の犬に対する関心を、動物への虐待と動物愛護の視点から文化史的に辿り、イギリス社会・文化の特質を浮き彫りにす… それでもイギリス人は犬が好き―女王陛下からならず者まで [著]飯田操 非常にユニークな「犬の本」だ。冒頭で、2003年の暮れ、エリザベス女王の愛犬がアン王女に飼われていたブルテリアに咬(か)まれて深手を負い、安楽死となった話が紹介される。以降、各単元の枕には犬への虐待行為や悲劇が語られ、犬好きで動物愛護の先進国とされたイギリスのイメージを根底から覆す。 実際、歴史を繙(ひもと)けば、イギリスは決して犬たちの楽園ではなかった。この国では17世紀ごろまで動物いじめを娯楽にする風俗があり、熊や牛に犬をけしかけて楽しむ「熊攻め」や「牛攻め」が行われていた。ブルドッグという品種が牛攻め用に改良されたというように。 また猟犬では、