いい本であった。インド哲学の「なぜそれを考えるのか」、「なぜそれを考えなければならなかったのか」のつながりがよくわかって、インド哲学の系譜や脈絡がわからなくなった人には、一本の筋や道すじが通った理解を手にできるだろう。 この本はまたインド哲学の「宇宙と自己の同一性の経験」という一大テーマに的をしぼっているのもいいだろう。「ブラフマンはアートマンである」と「汝はそれである」という一大テーマをめぐって、インドの宗教や哲学はその真理を探究してきたといえる。 そもそもこの日本ではなぜインド哲学やヒンドゥー教に興味をもつのかわからないだろう。私なんかはトランスパーソナル心理学と出会って、宇宙との一体化や神秘体験というものがあるのを知って、そんな体験がほんとうにあるのかという興味がつづいている。 それをおおむかしからいっているのがインド宗教――バラモン教なのであって、広大無辺で、語ることもできず、かた