268回 北野武監督作『首』は面白い 『首』はすごく変な映画だった。これを受け入れられない人がいるのはわかる。この作品がいわゆる「映画」になっていないからだ。だから、本格的な時代劇・歴史劇や北野武映画を求めていた人の評価が低くなる場合があるのは理解できるというものだ。 ただ、個人的には面白かったし、興味深い作品だった。 ビートたけしは秀吉に全く見えない。秀吉の衣装を着て秀吉コントをやっているビートたけしにしか見えない。言動もビートたけしがコントでやっているようなことばかりである。観るまでは、当時の秀吉を演ずるには老人すぎるとか、他のキャストの年齢との兼ね合いとか、猿にもハゲネズミにも見えないなど不安だらけだったのだが、秀吉の衣装を着て秀吉コントを演ずるビートたけし以外の何者でもなかったことにより、メタ構造を獲得(自分の脳内での認識にすぎないが)することになり、不安になっていた部分は全く気に