高層ビルの向こうにはすぐ田んぼ、でも池袋まで25分で行ける。川越、秩父に草加せんべい、あとは何かあったっけ? 都会と田舎に挟まれ、彼らは何を想うのか—おかしくも哀しい心の中を探る。 茨城とは器が違う 生まれも育ちも埼玉は大宮、40代男性が言う。 「高校生の頃、東京の同級生と初めて新宿で遊んだ時、『はるばる埼玉からよく来たな』とバカにされて、ケンカになりました。埼玉をバカにされるのって、顔や身長と同じで、自分じゃどうしようもないじゃないですか。だから悲しかったし、頭に来た。今となってはどうでもいいけどね。 親に『どうして埼玉なんだよ!』って噛みついたこともありました。いや、いいところなんですよ、埼玉は。空が広いよ。埼玉県民だから得した経験は、特にないけど……東京に近いことくらいかなあ。というか埼玉は、ほぼ東京でしょ?」 いまひそかに「埼玉」がブームになっているのを、ご存知だろうか。 ただし、