J Dilla が発展させたヨレたビートは、ポップ・ミュージックにおけるリズムのあり方そのものを変えた。J Dilla がトラック製作の際に、クオンタイズ(リズムの自動修正機能のようなもの)を使用しなかったことは、私の好きなエピソードの一つだ。 予め断っておくと、ここで言う“リズムのヨレ”は、不安定(=下手な)リズムを意味するものではなく、微妙にズレていて場合によっては不自然にきこえることもあるビートのことである。それは、楽譜としてデジタルな表記をする際には削ぎ落とされてしまっている要素でもある。 しかし、そこに心地よいリズムを紐解くカギが隠れている。簡単なDTMを使ってお気に入りのリズムの簡単な曲のドラムを打ち込んで見るとよい。BPMも完璧に合わせてあり、音質も完璧に合わせたとしても音源のニュアンスは再現できないことに気付くはずだ。その理由は、“リズムのヨレ”が表現できていないからである